火災保険金の税負担

初年度は圧縮記帳で軽減


 消防白書によると、この10年間で出火件数はおおむね減少傾向にあり、2017年中の出火件数は3万9千件と前年に比べて2500件ほど増加しているものの、10年前の72%にまで下がっているという。また、火災による死者数も、10年間で7割にまで減少した(17年は1456人)。

 

 火災によって製造用機械などの固定資産が被害を受けたときは火災保険で補うことになるが、保険金で黒字化すれば「焼け太った」とみなされて法人税の対象となる。

 

 この場合、保険金の全額を代替資産の取得にまわせなくなるため、損失の補填には足りなくなるという事態も起こりえる。そこで知っておきたいのが、資産の取得価格から保険金の額を減額する「圧縮記帳」の制度だ。これによって被災時の初年度の税負担を減らすことが可能になる。

 

 ただし、減価償却が終了する時点でのトータルの税負担は通常の記帳法と変わらないため、長期的な資金繰り対策は不可欠だ。仮に、購人した資産が100万円、減価償却期間10年、保険金30万円、法人税率30%で単純計算すると、通常の会計処理だと初年度に保険金の受け取り益に9万円(30万円×0・3)の税金がかかり、また10万円(100万円÷10年、定額法)の償却額が10年間発生する。

 

 10万円の償却は法人税を3万円(10万円×0・3)減らせる効果があるので、初年度の税負担は6万円(9万円‒3万円)、2年目以降の9年間は法人税額から3万円のマイナスとなり、10年間のトータタルでの減税額は21万円(初年度税負担6万円‒〈2年目以降減税額3万円×9年〉)となる。

 

 一方、圧縮記帳であれば、初年度に機械の取得費から保険金を差し引くので、70万円(100万円‒30万円)の資産を10年間で償却するため、償却額は10年合計で70万円となり、法人税から21万円(70万円×0・3)を減らすことが可能となる。トータルの税負担は通常の会計処理と同じだが、初年度の納税が不要になるという仕組みだ。火事が起きることを前提に考えたくはないが、万が一のときの知識として頭の片隅に置いておくといいだろう。(2020/09/23)