新築信仰の根強い日本と、建物を100年以上使い続けることも珍しくない欧米では、同じ木造アパートであっても賃貸物件として流通する期間に大きな差がある。だが、日本で税金を納める以上は、建物の所在地が国外であっても日本の固定資産税上の法定耐用年数が一律に適用される。
このギャップを利用して数千万円を節税する手法が、不動産オーナーの間で流行しているという。中古物件が材質ごとに定められた法定耐用年数をすでに経過している場合、「法定耐用年数の2割」を耐用年数として減価償却を行う簡便な方法が認められている。
木造建築であれば本来の耐用年数は22年なので、その2割、つまり4年間(端数切り捨て)で償却していくわけだ。例えば、海外で築22年超の中古物件を買う。収益性はさほど重要ではなく、事業用資産として4年で購入費を減価償却することが目的だ。欧米は日本に比べて土地の値段が安いので、仮に4千万円の土地と1億6千万円の中古物件を買ったとすると、この1億6千万円を4年で償却する。つまり毎年4千万円を「損金」とすることができる。
不動産所得は他の給与所得などとの総合課税で、損益通算も可能だ。さらに欧米の建物は数年を経過しても大きく値落ちすることがないとされているため、買値に近い額で売却できれば、譲渡所得税や諸経費を引いても数千万円の経費が残るというわけだ。
この節税手法については、会計検査院が2016年の年次報告で「公平性を高めるよう検討」することを財務省に求めている。今のところ具体化する動きはないようだが、近い将来、規制される可能性も十分にあるだろう。(2018/10/12)