会社法で定める「役員」とは、取締役、執行役、会計参与などの役職にあるひとのみを指す。しかし法人税法では、こうした役職には就いていなくても、実質的には役員同様の立場にあるひとを「みなし役員」として扱うルールがある。
「みなし役員」とみなされる条件は二つあり、どちらか一つでも該当すると税法上の役員として扱われる。一つ目は、法人の使用人でないのに経営に従事しているパターンだ。取締役として登記されていなくても、会長・顧問といった地位にあって、取締役会や経営に関する会議に出席しているケースが当てはまる。
もう一つの条件はやや複雑で、自社株の所有割合で判定が変わる。まず、その法人の「株主グループ」を株式の所有割合の大きい順に並べる。「株主グループ」とは、会社の株主と、その株主の親族など特殊な関係にある個人や法人を指す。そして、①所有割合が50%を超える第一順位のグループに属している、②第一順位と第二順位の株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超え、第二順位グループに属している、③第三順位までの株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超え、第三順位のグループに属している――を満たす場合は、みなし役員に該当する可能性がある。
①~③に当てはまり、なおかつ「属する株主グループの所有割合が10%を超える」、「配偶者と本人の所有割合が5%を超える」、「会社の経営に従事している」の3つの項目をすべて満たした場合、そのひとは税法上のみなし役員であると認定される。一つでも満たしていないなら、みなし役員には当たらない。
例えば、取締役に就任せず、経理事務を担当する社長の妻がいるとする。毎月開催されている経営会議や随時開催される取締役会には出席しないが、設立時の発起人に名を連ねていたため、自社株を1株だけ持っている。全株式の9割以上は夫である社長が所有している。このケースでは、妻は第1順位の株主グループに属することとなる。さらに「所属するグループの所有割合が10%を超える」、「本人と配偶者の所有割合が5%を超える」も満たすので、判定のポイントは妻が「会社の経営に従事している」か否かという点に絞られる。この例では、経営会議や取締役会へ出席していないため、経営に従事しているとは言えず、税法上のみなし役員には当たらないと判定された。(2021/03/29)