母の介護費用に充てたのに…

財産を使い込んだと訴えられた


 被相続人である母が85歳で亡くなってから、次女(63歳)は憂鬱な日々を過ごしている。長女(68歳)から「母の財産を次女が700万円使い込んだ」として訴えられ、係争中だからだ。

 

 次女が使ったお金は認知症の母を介護するため、自宅をバリアフリーにリフォームする費用として充てたものだ。しかも、症状が進む前の母から直接、預金通帳は次女に手渡されていた。長女は遠方に住んでおり、母の介護に一切かかわっていなかった。

 

 こうした場合、成年後見制度を利用して母に遺書を書いてもらっていれば問題はこじれなかっただろう。この制度は、認知症などで正常な判断ができなくなった人に代わって後見人を立て、その人自身のための法的手続きを行うことを認めるもの。

 

 後見人は、遺産相続の手続きにも関われ、被相続人に代わって遺言もできる。このケースでは母の判断能力が一時的に回復したときに聞き取り、遺言書を作成すればよい。ただし、被相続人が常時、全く判断能力のない状態になってしまうと、後見人が遺言書をつくることはできない。また、聞き取りの際には、医師2人の立ち合いが必要となる。(2017/11/15)