残業代が支払われていなかったとして裁判となり、時効ラインの2年にわたり割増額を加えた多額の賃金支払いが命じられるというニュースを頻繁に耳にするようになった。割増賃金は企業に対するペナルティー的なものだが、そうであっても労働者の給与であり、やはり所得課税の対象になる。
だが、数年分の未払残業代が一括支給されれば、支給された年の所得税が跳ね上がり、金額によっては児童手当やローン控除などが受けられなくなったり、保育料が跳ね上がったりする。
そこで、未払残業代は本来支給される時期の所得とすることが決まっている。そのため企業は本来の支給日別に支給額と社会保険料を算定し、その金額に基づいて源泉所得税を徴収・納付することになる。また、前年末までの源泉徴収票と給与支払報告書を再発行する必要がある。
もちろん、年末調整の対象となっている労働者については、年末調整もやり直さなくてはならない。年末調整で所得税の関係が終了していれば、訂正後の源泉徴収票による作業は特に必要ないが、他の所得を申告していた場合や医療費控除・ローン控除などの確定申告を行っていたときには、修正申告書や更正請求書を提出しなくてはならない。
そしてもうひとつ覚えておきたいのは未払残業代の損金計上の時期だ。給与としての税額計算は本来の時期にさかのぼるものの、費用の損金化は実際に支払った日または支給金額を決定した日となっている。(2018/10/02)