従業員が退職後に「未払いの残業代がある」といって請求してくるケースが増えている。国民の権利意識の高まりもあるが、食えない法律家がハローワークの前で若者をつかまえては、請求させて上前をはねているという話も聞く。
もちろん、未払いの残業代はれっきとした労働債権であり、タイムカードのコピーや残業時間のメモなど、証拠となるものがあれば会社側はまず勝てない風潮でもある。
残業代は、仮に時給1000円で毎日1時間ずつとすれば、月に22日で2万2000円。未払賃金の時効である2年間の全日が対象なら24カ月分で52万8000円となる。これが1日3時間で10人いれば1584万円となり、それ以上は試算するのも恐ろしい。
残業代に関しては極めてナーバスにならなくてはならない時代となっている。だが考え方を変えれば、これは無利息で金を借りていたようなものだ。つまり未払いだった分に罰金30万円を払えば済む話。これよりも、もっと恐いのは罰則のある未払い代だ。
労働基準法では、これを付加金と呼び、①解雇予告手当、②休業手当、③割増賃金、④有給休暇取得時の賃金――の支払いをしないとき、労働者の請求により裁判所は未払い金と同額の支払いを命じることができる。つまり元本とあわせて倍の支払いとなるわけだ。
ただし、労働者が訴えれば必ず付加金の支払命令が出されるわけではなく、それなりに「悪質」と判断されたものに限られる。だが「名ばかり管理職」の問題で争われたマクドナルド事件では付加金の支払いが命じられるなど、あながち脅しとも言えないため、細心の注意は必要だ。
なお、未払賃金に関する請求期間は2年間であることも覚えておきたい。はるか昔に退社した元従業員が、会社の労務知識を見くびって請求をしてくることも考えられるので注意したい。(2018/03/16)