放置しがちな名義株問題

相続発生前に解消を


 「名義株」とは、株式の名義上の所有者が誰であれ、実質的な所有者が他にいるのであれば、真の所有者は後者であるとみなされる株式のことだ。

 

 判例では、株式取得資金の出資者、名義人と引受人の関係、取得後の配当金の帰属状況などから総合的に判断されている。過去には、創業者の遺族が所有する自社株が実質的に創業者の「名義株」であるとして、80億円超の相続財産の申告漏れを指摘されたケースもあり、相続税対策を考える上では外すことのできない重要テーマだ。

 

 名義株問題を放置しがちなのは平成2年以前に設立した会社だ。同年に商法が改正されるまで、株式会社を設立するには発起人を含めて8人の株主が必要とされていた。このため社長が親戚や知人に頼んで名義だけを借り、株式の取得資金は社長自身が全額負担するということが当たり前に行われていた。

 

 名義株問題を解消するには、相続が発生する前に株式を実質上の保有者の元に集約しておく必要がある。しかし、相手が株主としての権利を主張したり、名義の書き換えを拒否したりする可能性もゼロではない。裁判など面倒なことになる前に、問題解消への取り組みを開始したい。(2020/11/02)