振り込め詐欺被害は控除できず

盗難や横領は控除対象に


 盗難や横領による被害を受けた人は損失額の一部を所得から差し引ける「雑損控除」を利用できるが、振り込め詐欺の被害者はこの制度の対象にならない。犯罪者にお金を奪われたという点では同じなのに税務上は大きな違いがあるわけだ。

 

 この理由について平成23年の国税不服審判所の裁決書を紐解いてみたい。振り込め詐欺の被害者が雑損控除を利用できない理由について審判所は、振り込み自体は納税者の意思に基づいて行われているので、雑損控除の対象になる「盗難」の定義「財物の占有者の意に反する第三者による当該財物の占有の移転」には当たらないと説明している。

 

 また、振り込んだ時点でお金の所有権は犯人に移転しているなどの理由で、「横領」の定義である「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をすること」にも当たらないという。税務上では、詐欺に遭った人は自分で判断する余地があった上で被害を受けたとみられるようだ。

 

 雑損控除は「損失額-総所得金額×10%」と「損失額のうち災害関連支出の金額-5万円」のいずれか高い金額を所得から差し引ける制度。国税庁は雑損控除の対象になる被害に、盗難と横領のほか、震災、風水害、冷害、雪害などの自然災害、火災や火薬類の爆発など人為による被害、害虫など生物による被害を挙げている。(2018/01/17)