退職手当は通常の給与と比べ、税制面で優遇されている。長年の勤務に対する報奨としての性格のほか、退職後の生活保障の意味合いがあるためだ。
役員が定年退職で退職金を受け取った後、そのまま別の肩書きや勤務体系で会社に残ることがある。常勤役員が非常勤役員になるケースや、取締役が監査役となるケースがこれに当たる。
このときに受け取った退職金だが、役員の肩書きだけが変わり、実際の仕事や報酬があまり変わらないのであれば、税務上で優遇される退職金にはならない。また、子どもに社長職を譲ったものの、子どもの力量に不安を感じて親が取締役にとどまり、いつでも〝再登板〞できるような状態のときも、実質的に退職したことにはならず、税優遇の対象外だ。
なお、昭和58年の最高裁判決では、退職所得につき、退職(勤務関係の終了という事実)で初めて給付されること、継続的な勤務に対する報償、あるいはその間の労務の対価の一部の後払いの性質があること、一時金として支払われること――といった条件を挙げている。(2016/07/30)