ある地主が、ゼネコンの委託業者から「土地の交換には税金がかからない」とアドバイスを受け、ゼネコンに土地を譲渡して別の土地を取得したところ、業者の説明は誤りで税務署から追徴課税を受けた事例がある。
地主はゼネコンに責任があるとして、損害賠償を求める訴えを提起。判決は「ゼネコンの委託業者は税の専門家ではないので、結果的に誤った説明でも法的責任はない」として、地主の請求を棄却するものだった。
この裁判のケースでは「土地の交換には税金がかからない」という助言は結果的に誤ったものとなったが、土地の交換が課税対象にならないことは実際にある。
土地や建物などの固定資産を別の固定資産と交換したときには、一定の条件に該当すれば譲渡がなかったものとみなす特例により課税されない。この特例は、土地と土地、建物と建物のように、同じ種類の固定資産を交換したときに適用されるが、同じ種類でも、不動産業者などが販売用に所有している棚卸資産は対象にならない。
裁判で争った地主はゼネコン所有の土地(棚卸資産)を交換で得たため、特例が適用できなかったとみられる。交換で取得した資産は、交換直前と同じ用途で使用しなければならない。土地は宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野などの用途に、建物は居住用、店舗用、事務所用、工場用、倉庫用などの用途に区分され、取得前と異なる使い方をすれば課税されてしまう。
交換する資産は1年以上所有していたものでなければならず、また交換する資産同士の時価の差額が、時価が高い資産の2割以内であるという条件もクリアしなければならない。
土地の評価や適用の判断には専門的な知識が必要だ。専門的知識がない人の助言には何の責任も伴わない可能性があるので、税理士に相談するのが賢明だろう。(2020/05/29)