小売業を営むAさんは、取引先である製造会社のB社から、B社の製品が車体全体にデザインされた自動車を40万円で購入するように依頼された。B社はこの自動車を購入したばかりで、その金額は90万円だったというが、「使ってくれれば商品の宣伝になるから」とのことで低価格で譲渡するという。Aさんは日ごろの付き合いもあり、B社の提案に応じることにした。
このように低額で資産が譲渡されたとき、Aさんには50万円(90万円-40万円)の経済的利益があり、所得税が課税されるのが一般的だが、広告宣伝用の資産には特例が設けられているので課税されない。
取引先から資産を無料または低価格で受け取ると、市場価格との差額が利益であると税務上判断され、基本的に差額全額に課税される。しかし、販売業者が製造業者から広告宣伝用の資産を無償、あるいは元々の金額に満たない額で取得したときは、元々の額の3分の2の額から購入額を差し引いた残りを「経済的利益」として事業所得にする。この残りの額が30万円以下であれば課税されない。
Aさんの経済的利益の額を計算すると「製造業者の購入金額90万円×3分の2 -Aさんの購入金額40万円=20万円」となり、30万円以下なので課税対象にならない。
なお、同様の税務処理ができるものには、製造業者の製品名・社名の広告宣伝を目的としている陳列棚や陳列ケースがある。(2016/12/24)