単身赴任者の税務

「生活の拠点」1年が目安に


 事業者は、給与支払報告書を作成して自治体に提出する義務がある。報告書の提出先は市区町村であるため、従業員の住む場所などによって提出先も変わってくる。そこで気になるのが、単身赴任者の報告書をどの自治体に出すべきなのかという点だ。

 

 例えば神奈川県横浜市の自宅で家族と生活をしているAさんが、仕事の都合で大阪府大阪市にワンルームマンションを借りることになったとする。平日はマンションで暮らし、週末の土曜日と日曜日は東京の自宅に戻ってくる。

 

 こうしたケースでは、Aさんは仕事のために大阪のワンルームマンションで暮らしているだけであって、生活の拠点は家族のいる横浜市と考える。つまりAさんの給与支払報告書の提出先は横浜市となる

 

 地方税法では「勤務する事務所または事業所との関係上、家族と離れて居住している者の住所は、本人の日常生活関係、家族との連絡状況の実情を調査確認して認定するものであるが、確定困難な者で、勤務日以外には家族のもとにおいて生活をともにする者については、家族の居住地にあるものとする」と定めている。

 

 ただしAさんの赴任生活が1年を超えると話は違ってくる。仕事の関係上、家族の居住地を離れて転々としている人や、職務の性質上、一定期間家族の居住地を離れて別に起居している人について、地方税の取り扱い通知では「同一場所に一年以上居住している場合は、本人の住所は、その場所にあるものとして取り扱う」とも説明しているからだ。つまり、単身赴任期間が1年を超えているかどうかがボーダーラインだと覚えておきたい。

 

 なお、実際に住んでいるのは東京だが、住民票は実家のある大阪に置いたままというケースもある。この場合どちらに給与支払報告書を出せばよいかというと、実際に暮らしていて行政サービスを受けている東京ということになる。(2021/02/26)