被相続人である親が、死亡する1年前に、銀行から資金を借り入れて350万円で墓を購入したとする。その後、相続が開始。墓の購入のための借入金のうち、220万円の残高があったため、相続人である子は、相続税申告書の「債務および葬式費用の明細書」の欄に、その借入金残高を記入した――。この税務処理は誤りだ。
墓石や墓地は祖先崇拝の慣習に基づいて所有するものであり、換金するような財産ではないため、相続税の課税対象から外されている。そして、その財産に関する債務は、相続税の計算上で債務として差し引くことができない。
冒頭の例は墓という非課税財産に関する借入金なので、債務欄に記入すると誤りとなる。墓のほかにも、仏壇、仏具、神を祀る道具など日常礼拝をしているものも、相続税法上の非課税財産とされる。
生前に購入しておけば相続財産を減らせるので、財産圧縮につながる有効な一手となり得る。ただし、その仏具などの礼拝物に骨董的な価値があると、投資の対象または販売商品とみなされ、相続税の課税対象になる。高級な礼拝物を持っている人はその点に注意したい。(2016/09/09)