実家の土地建物を相続した長男が、自分の財産から同価値程度の金銭などを弟に渡すことで不公平とならないようにする。これが「代償分割」と呼ばれる方法だ。
自社株を後継者に集中させようとする場合にも「代償分割」が多く使われる。このため将来的な事業承継を考える際には「代償分割で渡すお金に困らないよう、後継者固有の財産となる生命保険に加入しておくべき」というアドバイスがなされる。
代償分割に充てる財産が現金以外だと、新たな税負担が生じるリスクがある。税法では、現金以外の資産を代償分割に利用すると、渡した時点で「時価で売却したもの」として扱う規定がある。つまり、代償分割で渡す資産の取得価額を時価から差し引いて利益が残れば、代償分割をした長男に譲渡所得税などが課されることとなる。
代償分割で受け取った側にも、不動産取得税が課されてしまう。税法には相続で引き継いだ財産については同税を課さないという特例があるが、代償分割にはこの特例が適用されない。さらに、相続による所有権移転にかかる登録免許税には0・4%の軽減税率が適用されるが、代償分割にはこちらも適用されず、2%の税率が課されてしまう。
代償分割の財産は必ずしも現金である必要はないが、追加の税負担などを考えれば現金で渡すべきかもしれない。ちなみに現金以外で代償分割を行うと、その価値が相続財産の不足額にぴったりと合致することはまずない。不足しているなら現金など他の資産で埋め合わせするが、逆に過剰だと、多すぎる部分については贈与とみなされ、さらに税負担が発生してしまう恐れもある。(2021/04/14)