日本の国籍法では、2つ以上の国籍を持つ20歳未満の人は、22歳になるまでに国籍を選択しなくてはならない。二重国籍となったのが20歳以降なら、日本以外の国籍を得てから2年以内とされている。ただ、外国籍を離脱せずにいても罰則はないため、いわゆる「二重国籍」の状態になっている人が存在する。
国籍は個人のアイデンティティーの問題にも絡むため、杓子定規に考えるのは慎むべきだが、納税にあたっては各国で厳格にルールが定められている。おおむね、日本を含めた多くの国では、国籍を問わず「どこに住所(居所)があるか」と「どこで所得が発生したか」で判断している。
「自国民は世界中どこにいようと自国民」という〝属人主義〞を採用しているアメリカでは、米国民であれば世界のどこに住んで、どこで稼いでも、米国で申告納税することになる。もちろん、これはあくまでも立法上の形式論にすぎず、納税までは強要されない。ただし、税金の申告は必要で、年末調整がない米国では日本に住んでいても米国籍のある人は米国の税務当局に向けて毎年確定申告を行う必要がある。
二重国籍で特に面倒なのは相続だ。「日本の法の適用に関する通則法」によると、相続は、「被相続人の本国法による」と定められているため、生まれてから死ぬまで日本を一歩も出たことのない米国人は、法定相続人の範囲や順位、法定相続分といった相続の仕方はすべて米国法に従うことになる。当然、相続の際には国際相続に詳しい専門家の力を借りることになるだろう。(2020/07/01)