天皇陛下が2019年4月30日に退位されることが決まった。翌日には皇太子殿下が新しい天皇として即位し、「平成」に変わる新たな元号も施行される。
生前退位に向けた道筋は、17年6月に成立した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」でおおよそが固められている。同法では退位した天皇が「上皇」となることなどが盛り込まれ、附則第7条には、「皇位とともに皇嗣が受けた物については、贈与税を課さない」と規定された。
所得税法9条には税金のかからない所得の種類が列挙されており、そのなかに「皇室経済法の規定により受ける給付」というものがある。これは皇室の活動に係る諸費用のことで、具体的には天皇家と皇太子家に支払われる生活費である「内廷費」、それ以外の皇族に支払われる「皇族費」、そして儀式や国賓の接待、皇室としてのさまざまな活動に使われる「宮廷費」がそれに当たる。
同様の特例は相続税法にもあり、今上天皇は昭和天皇から遺産約9億1千万円を相続し、約4億2800万円の相続税を納めたといわれるが、その際にも皇室経済法で規定された財産には相続税がかからなかった。
非課税財産は580件あったそうで、そのなかには「八咫鏡(やたのかがみ)」、「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」、「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」という、いわゆる三種の神器も含まれていた。しかし同規定はあくまで相続税の規定であり、贈与税ではない。
その理由は天皇陛下の生前退位を想定していなかったからで、その結果、もし特例法がないままであれば、退位の際には国宝級の三種の神器をはじめ「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」580品に、想像できないほど高額の贈与税がかかっていたわけだ。(2018/02/21)