日本の税法では、所得税を課される収入、つまり「所得」は10種類に区分されている。「給与所得」「退職所得」「配当所得」など名前から内容がなんとなく分かるものもあるが、「雑所得」や「一時所得」などは名前を聞いただけでは中身が想像しづらい。
このうち雑所得は他の9種類のいずれにも該当しない所得という特殊な区分だが、もうひとつの一時所得とはどのような収入を指すのだろうか。
一時所得について、所得税法では「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」以外のもので、さらに「労務や役務または資産の譲渡の対価としての性質を伴わない」一時的な所得を指すと規定している。
その範囲は幅広く 懸賞の賞金品、福引の当選金品、競馬や競輪の払戻金、法人から贈与された金品、遺失物取得者や埋蔵物発見者の受ける報労金、売買契約の解除による手付金や償還金、損害保険の満期払戻金などはすべて一時所得に該当する。細かいところでいえば、「100円お買い上げで1ポイント付与」のような、後で現金として使えるポイントカードも原則的には一時所得だ。
同じ名目のお金でも受け取り方によって所得の種類が変わることもあり、例えば保険料の負担者と保険金の受取人が同一人物で、生命保険の満期保険金を一時金として受け取った時には、保険金は一時所得となる。しかしこれを年金で受け取った場合は雑所得だ。
保険料の負担者と保険金の満期受取人が別であれば、保険金にはそもそも所得税ではなく贈与税が課される。それが年金タイプであれば年金受給の権利に対して贈与税がかかり、2年目以降の受け取り分は雑所得となるなど、かなりややこしい。
一時所得の金額は総収入金額から、収入を得るために支出した金額と特別控除額(最高50万円)を差し引いて算出する。支出した金額、つまり経費は、他の事業所得や雑所得に比べてかなり要件が厳しく、収入を得るために直接必要となった金額のみを計上できる。
たとえば競馬の払戻金は原則として一時所得に当たるが、その際に経費とできるのは当選した馬券の購入費用だけで、ハズレ馬券は含まれない。他の所得と損益通算もできないなど、10種類の所得のなかでも一時所得は〝冷遇〞されているという印象だ。
営利でもなく役務の対価でもない一時所得は、国から見れば単なる幸運の産物であり、多めに税金を取ってもいいと思われているのかもしれない。(2018/06/13)