新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、多くの中小企業が大幅な業績悪化のリスクに晒されている。
コロナの影響を税金面から見てみると、売り上げが減った分だけ法人税が減るのは当然だ。しかし、それ以外の税金でも負担が減るような措置を何か受けられないだろうか。
例えば土地建物という資産を持っていることに対する税金である「固定資産税」でも、コロナで客足が途絶えた事実をもって、土地の資産性が下がったとみることはできないか。
総務省が定める固定資産評価基準の第2章第3節6では、「所在地域の状況によりその価値が減少すると認められる家屋等」については、需給事情に応じて減点補正率を適用できるとされている。従来は豪雪地帯などに認められる特例だが、受給事情に応じるというなら、売上が大きく落ち込んだ観光地でも適用の余地があるように思える。
この特例の適用の可否については明確な基準が示されていないこともあり、しばしば納税者と自治体が対立するポイントとなっている。例えば過去には、福島第一原発に近いゴルフ場が、固定資産税評価額が原発事故前と変わらないことを不服として訴えを起こした例がある。この裁判では一審・二審ともに、「放射性物質に汚染された廃棄物が保管されている場所に隣接していてゴルフ場が利用できない」としてゴルフ場の訴えを認め、固定資産税の減額を命じた。
一方で納税者の主張が認められなかったケースもある。栃木県の観光地である那須塩原の温泉旅館経営会社は、過去10年間で観光客が27%も減少したことを理由に、「儲けを観光客に依存する温泉旅館という性格上、資産としての価値に課せられる固定資産税に観光客の減少が反映されないのはおかしい」と自治体を訴えた。
この裁判で地裁は「観光客の著しい減少は家屋の市場価値を低下させる」として15%の減額を自治体に命じたものの、高裁では一転、「同じ温泉街でも経営を続けている例も複数あり、観光客が減ったことが、ただちに建物の価値を減少させるとは認められない」として訴えを退けた。
単純に売上が減っただけでは、固定資産税の評価減額の特例は認められない。しかし、いわばコロナウイルスは、経営努力などではどうしようもない〝天災〞だ。それを考えれば、税負担減の特例が認められる余地はあるかもしれない。(2020/03/09)