2500万円まで贈与税負担を生じさせずに財産を渡すことができる「相続時精算課税制度」。税負担を抑えながら子や孫に資産を引き継げる方法として検討した人も多いはずだ。
この相続時精算課税について、「2500万円までの贈与が非課税になる」と説明されることもあるが、厳密に言えばこの表現は正確ではない。より細かく言うなら、「2500万円までの贈与について、『贈与税』が非課税になる」が正しい。どういうことかと言うと、相続時精算課税を使って贈与した2500万円については、贈与税を課されることはない。しかし将来的に相続が発生した際には、すでに渡した2500万円は相続財産として相続税を計算されてしまうのだ。
その上で、すでに納めた贈与税額があるなら相続税額と差し引きし、足りなければ不足分を納付し、多く納めていれば還付を受けられる。つまり相続の時まで課税の「繰り延べ」をしたに過ぎないということだ。
単純に「非課税枠が2500万円」と考えていると、いざ相続が発生した時に損をする可能性がある。では相続時精算課税は節税にならないのかと言えば、そんなことはない。例えば生前贈与しておいた分が相続財産に繰り入れられても、相続財産全額が「3000万円+法定相続人の数×600万円」という基礎控除の枠を超えなければ、贈与税も相続税も課されない。また相続税が発生してしまっても、相続税の税率は贈与税に比べて低いため、トータルで税負担を大きく抑えられることもあり得る。
さらに細かいテクニックとして、相続時精算課税を使って贈与した財産は、相続税の計算をする際にも「贈与時の価額」で評価されることがある。不動産などが贈与から相続までの間に大幅に値上がりしていれば、値上がり分だけ非課税で渡せることになる。ただし、値下がりすることも考えられるので、相続時精算課税を使ったほうが得とは一概には言えない。
相続時精算課税を使ったほうが得か損かは状況によって様々なので、顧問税理士などとよく相談して、綿密にシミュレーションをしたほうがいい。(2018/01/05)