離婚に伴う慰謝料には原則として税金がかかることはない。これは不倫相手から得た慰謝料などについても同様の扱いで、「損害賠償金」的な意味合いを持つ収入は原則として非課税とされている。
ただし、慰謝料のうち非課税となるのは、あくまでも「社会通念上それにふさわしい金額」のみとされている。つまり、あまりに高額で「過大」とされた慰謝料は課税される可能性があるわけだ。
「社会通念上ふさわしい金額」は収入などによっても変わるだろうが、世界で最も高い離婚の慰謝料は通販大手アマゾンの創始者ジェフ・ベゾス氏が支払った4兆円だと言われている。
慰謝料は原則非課税だが、離婚する際の財産分与には税金がかかる可能性がある。しかも分与した側にだ。分与する財産が現金であれば税金はかからないが、住宅や土地などの不動産を分与によって渡したときには、譲渡所得があったものとみなされる。
ただし、すべてのケースで税負担が発生するかといえばそうでもない。分与する不動産の価値が取得時より下がっていれば、そもそも譲渡益が発生していないとみなされて税額はゼロとなる。
取得したときよりも価値が上がっている場合には、税負担を抑える2つの方法がある。1つ目は、「居住用財産の譲渡所得の特例」だ。この特例は、自分が居住している住居を売却したとき、3千万円までを譲渡所得から控除できるというもの。ただし別荘や投資用のマンションなど、自宅以外の不動産には適用できないことに加え、「夫婦間や親子間の譲渡には適用されない」という注意点があることを覚えておきたい。つまりこの特例は、離婚後に使わなければ意味がない。
2つ目は、「贈与税の配偶者控除の特例」だ。20年以上婚姻関係を続けている夫婦間で住宅を譲り渡すときには、2千万円までを非課税とするもので、通常の暦年贈与の非課税枠と合わせて2110万円まで税金がかからないことになる。1つ目の特例とは逆に、こちらは配偶者でなければ適用されないため、離婚後には使えない。
離婚前にしか使えない配偶者控除と、離婚後にしか使えない譲渡所得の特例。2つの方法で、財産分与にまつわる税負担を抑えられるわけだ。厚労省の調査によれば、1年間に離婚を選ぶ夫婦は20万件を超えるという。離婚の傷を少しでも抑えるために、これらの特例を活用したい。(2019/09/04)