経済的な事情や虐待などの理由によって親元で暮らすことができない子どもは国内に4万6千人以上いるが、その8割以上が乳児院や児童養護施設で生活している。
生みの親のもとで暮らすことができない子どもを施設ではなく家庭で養育する仕組みには、「里親制度」と「特別養子縁組制度」がある。二つの制度の大きな違いは法律上の親子関係が結ばれるか否かで、特別養子縁組制度では子どもの親権を持って養育することとなる。
特別養子縁組制度は、6歳未満(改正民法施行後は15歳未満)の子を法律上の子とする仕組みで、養子は基本的に実子と同様に相続などの法律上の権利を持つ。
一般的に広く使われている「普通養子縁組」では生みの親との親子関係は消滅しないのに対し、特別養子縁組制度では縁組をした時点で養子と生みの親の親子関係が消滅し、原則として養親と養子は離縁できず、親子関係が続くことになる。
一方の里親制度は、通常の親権を持たずに子どもを養育する制度で、親とは言っても里子との間に法律上の親子関係はないため、里子と生みの親との親子関係は継続する。里親の相続が発生しても里子には遺産を受け取る権利がなく、里子に確実に相続させるには遺言や養子縁組といった手段をとるしかない。
子どもが生みの親の元へ戻るか、あるいは18歳で自立すれば養育関係が消滅する。里親は行政から子育てを委託される立場なので、養育のための費用を一定額まで受け取ることができる。通常の「里親手当」は月8万6千円(2人目以降は4万3千円)で、非行問題のある児童や虐待で心身に甚大な影響を受けた児童、身体障害や精神障害がある児童を養う場合は月13万7千円(同9万4千円)と規定されている。
ほかにも食費や被服費などの一般生活費、幼稚園の費用や教育費、医療費なども補助される。里親として里子の紹介を受けるには一定の研修の受講や児童相談所の調査などを受ける必要がある。里親候補者となった後も、5年ごとに更新研修を受けて登録の更新をしなければならない。(2019/12/04)