子には民法で定められた最低限の遺産を受け取る権利がある。これを遺留分という。遺留分を請求できるのは配偶者、親、子。きょうだいは含まれず、親がいない場合は祖父母、子がすでに死んでいる場合は孫が遺留分を主張することができる。
遺留分を計算する上で算定基礎となる金額には、相続が発生時の財産はもちろん、一部の生前贈与も加算される。法定相続人への相続発生から10年以内の贈与と、相続人以外への1年以内の贈与は、遺産に足し戻して遺留分を計算する。
法定相続人への贈与については、これまでは期限なしで過去に遡って足し戻していたが、2019年7月に「10年以内」に改正された。
遺留分を請求するには「順番」がある。たとえば、4人きょうだいの末っ子が遺留分を請求する場合、最も多くの財産を生前贈与によって受け取った長兄、遺言によって少額の遺産を受け取った次兄、介護を請け負う代わりに現金を受け取る約束をした長女のうち、誰から遺留分を取り戻せばいいのか。遺留分の額を3等分してそれぞれから同じ額を受け取ると思いがちだが、遺留分を請求できる財産には決まった順番がある。
3人のきょうだいの財産の受け取り方はそれぞれ法律上の区分が異なる。次兄のように遺言で財産を受け取るのは「遺贈」、長女のように生前の贈与契約に基づいて死亡時に受け取る方法は「死因贈与」、長兄のように生前に受け取るのは「生前贈与」となる。
遺贈と死因贈与は似ているが、前者はあくまで贈る側の一方的な意思であり受け取る側が断れるのに比べ、後者では両者同意の契約による贈与のため受け取る側が一方的に放棄できない点が異なる。
遺留分請求の順位は、①遺贈、②死因贈与、③生前贈与――となっている。つまり財産を受け取れなかった末っ子は、まず遺贈で財産を受け継いだ次兄に遺留分を請求しなければならない。その結果、末っ子の遺留分の全額を充当できれば長兄と長女は請求されない。
次兄への請求だけでは足りない場合は、死因贈与で財産を受け取った長女が請求される。なお、複数の生前贈与がある場合には、相続発生日に近いものから順番に遺留分請求の対象となる。(2019/12/06)