中小企業の「退職金」は、自社内での積み立てと共済制度を利用して用意することが多いが、最近では自社の株式で支給する企業も増えてきている。
税務上は株式の評価額で計算するため、現金で支給した場合と変わりはない。退職者に支給した株式が1千万円相当額であれば、退職所得は1千万円ということになる。
非上場の中小企業では、社員が持株を売却して、退職時に金銭化するというケースも考えられる。この場合、持ち株式を売却するだけのことなので、自己の権利を行使しているに過ぎず、会社から退職金を支給されたことにはならない。そのため税務上は退職所得として扱われず、税の軽減措置は受けられない。
会社が本来の評価額よりも高い値段で社員の持っている株を買い取り、その差額分を退職金とすることも考えられるが、これは会社にとっての「利益圧縮」行為とみなされる恐れがあるので注意が必要だ。
多額の退職金を支払うことによって株価を引き下げる手法は、事業承継時のタイミングでポピュラーに行われ、それなりに効果を上げてはいるが、国税も厳しくチェックしているところだけに慎重に取り扱いたい。(2019/09/09)