警察庁によると、平成28年中の「振り込め詐欺」による被害件数は、前年度に比べて7%増加しているという。しかし現在に至っても、振り込め詐欺被害には、税制上の救済措置がない。
所得税制には、さまざまな被害に対する損失額を雑損控除として所得から減らす仕組みがある。被害の対象は、震災・風水害といった自然災害、火災・火薬類の爆発など人為による被害、害虫など生物による被害、盗難、横領などの犯罪被害である。
この制度で控除の対象外となっているのが、「恐喝」と「詐欺」だ。災害や盗難が予期せず受ける被害であるのに比べて、恐喝や詐欺は、自分が判断する余地があった上で受けた被害とされるかららしい。
この「自己責任論」は、平成23年5月23日、国税不服裁判所で審理された振り込め詐欺事件でも適用され、「救済できない」とされた。だが、振り込め詐欺グループが仕掛ける巧みな詐欺は、実態からすると人によっては自己責任では防げない悪質な犯罪であり、「盗難」や「横領」と同等としてもよいのではないかと思われるものも少なくない。(2017/07/03)