自社製品を社員割引販売

3割引が境界線


 自社商品を従業員が社員割引で買うと、その値引率によっては給与として課税されてしまう。そのボーダーラインは通常販売価額のおおむね3割引きで、それを超える割引は給与とみなされてしまうようだ。

 

 給与課税されないためには、複数の要件のすべてを満たす必要がある。その要件とは、①販売価額が原価以上であり、かつ通常に比べて著しく低い価額(おおむね70%未満)でないこと、②役員や従業員によって割引率に差があったとしても、地位や勤続年数に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内であること、③値引販売をする商品の量は、一般の消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度のものであること――となっている。

 

 ①については前述のとおり、安くしても3割引までで、コスト割れしないことを求めている。③は社員による転売を防ぐ趣旨だ。②については、逆に言えば「合理的なバランス」の範囲内であれば、役員と従業員で割引率に差を付けるのは問題ない。「合理的なバランス」の範囲は明示されてはいないものの、3割引までの範囲内で勤続年数や役職に応じたものであればよいだろう。ただし割引自体が一部の役員のみに認められた特権というようなケースは否認されるので気を付けたい。

 

 自社製品を無償で支給した場合にも、現物給与の支給があったものとして課税される。また、これらのルールから有価証券や不動産、食事は除かれていることに留意したい。有価証券や不動産を割引価格で販売したら、割引分全額について社員が給与課税される。

 

 飲食店の場合、自社商品は「料理」ということになるが、従業員への食事の支給については別途通達で取り扱いが定められている。支給を受ける本人が半額以上を負担し、1カ月当たりの支給額が3500円以下であれば給与課税の対象とならず、福利厚生費として認められる。(2019/03/28)