相続税対策の一環として「一般社団法人」を設立する人がいる。使い方次第で株式会社や個人で財産を持つより節税になるというのが理由だが、そもそも一般社団法人と普通の株式会社、さらに一般財団法人、任意団体はどこが違うのか。簡単におさらいしておきたい。
まず一般社団・財団法人と株式会社の大きな違いは、「持分」があるかないかという点に尽きる。例えば1千株の株式を発行している株式会社があるとして、A株主が8百株、B株主が2百株保有しているなら、株主総会でA株主は全体の80%の議決権を行使でき、配当があれば配当原資総額の80%を受領する権利があり、解散時にはその時点での財産額の80%を受け取る権利がある。
これに対して一般社団・財団法人で、拠出金の80%をAが、20%をBが出している場合、定款で拠出額や会費の額に応じて議決権があると定めていない限りは、原則として2人はそれぞれ等しく1つの議決権しか持たない。また2人に配当金を支払ったり、解散時に残余財産を分配したりすることは基本的に法律で禁じられている。
一方、組織構成としては、株式会社は株主が1人でもよいのに対し一般社団法人の株主に相当する「社員」は2人以上必要とされること以外、株式会社と一般社団法人はほとんど変わらない。しかし一般財団法人については、理事3人以上で構成される理事会を設置すること、監事を1人以上置くこと、評議員3人以上で構成される評議員会を設置すること、純資産額が300万円以上であることなど、満たさなければいけない条件が複数ある。
株式会社と同様の経営をするためには、これらの規制がない分、一般財団法人より一般社団法人のほうが容易で、相続税対策として設立されるのが一般社団法人ばかりな理由はここにあるわけだ。
ちなみにPTAやマンションの管理組合は登記をしていない、いわゆる任意団体として運営されているものが多い。これらは法律上の団体として認められないため、銀行口座などは代表者の名前で持たざるを得ない場合も多い。(2019/04/24)