確定拠出年金の「選択型」

マッチング拠出との違いに注意


 毎月決まった額を拠出して運用する「確定拠出年金」を、退職年金制度として採用する企業が増えている。これまでの確定給付年金では将来の給付額が決まっているため、積立金の運用に失敗して給付額を確保できなくなれば、会社がその差額を補てんする義務が生じた。

 

 確定拠出年金には、会社側の負担を抑えるいくつかのバリエーションがあるので把握しておきたい。例えば「マッチング拠出」と呼ばれる方式は、企業が導入した年金制度に、従業員個人が掛け金を上乗せする制度だ。企業側の拠出額を抑えつつ、従業員の給料から天引きする形で掛け金をプラスすることができる。掛け金は全額が所得控除の対象となる。ただし同制度の特徴として、個人が上乗せする額が事業主の拠出する額を超えることは認められていない。そのため、そもそも会社がある程度の額を拠出できなければ、上乗せしたところで従業員が満足できる拠出額にならない場合もある。

 

 会社が財源を捻出できるか不安な場合には、「選択制確定拠出年金」も検討してみたい。「選択制」は従業員の給与や賞与を掛金に充てるというもので給与原資プランなどとも呼ばれる。掛金を企業が拠出するのではなく従業員の給与等から振り替えるので、手取り額は減ることになる。しかし、給与ならば所得税がかかるが、掛け金として天引きした分は全額非課税となり、効率的に老後資金を積み立てることが可能だ。

 

 もちろん月々の給与が減るのは嫌だという人もいるので、「選択制」の名前の通り、全員一律ではなく任意加入となっている。給与から振り替えた掛金の分、社会保険の標準報酬月額が下がるので、社会保険料の負担が減るというメリットもある。もっとも、月々の社会保険料の負担が減るということは、将来受給する公的年金が減る可能性もあるので、どのような制度を導入するにせよ労使双方が長所と短所をきちんと知り、合意の上で進めるようにしたい。(2019/03/14)