相続回復請求権とは?

独り占めにされた遺産を取り戻す


 兄弟3人で父の遺産を共同相続したのに、父が住んでいた実家に長男一人が転がり込み、しかも現預金や車などの動産も独り占めしている――。そんなとき、弟二人は兄に対して「相続回復請求権」を主張して遺産の取り戻しを請求することができる。

 

 もともと相続回復請求権は、真の相続人でない者が相続人のように振舞って遺産を奪う行為を防ぐためのもので、請求相手は「一見相続人に見える者」を指す表見相続人が想定されていた。

 

 表見相続人となるのは、父の生前に親を虐待したことで相続人の廃除を受けている者のほか、偽りの出生届や無効な養子縁組で子どもとなっている者だった。これが後に判例で、表見相続人だけでなく、真の相続人(共同相続人)が当該相続人の取得分以上の財産を独り占めしているようなケースも含まれると判断された。

 

 また、相続回復請求権は、侵害者に対する個々の財産そのものの請求権にとどまらず、相続人たる地位の回復を要求する権利とされている。相続回復請求権は、侵害の事実を知ったときから5年間(時効期間)、相続開始から20年間(除斥期間)で権利が消滅する。ただし、時効を盾に真の相続人の請求を退けられるのは、自分に相続権がないことを知らずにいた「善意無過失な侵害者」に限られるため、弟たちを追い出した兄のような場合はあてはまらない。(2019/11/27)