相続人の「廃除」とは?

遺留分も認められない


 昔から何かにつけ反発してくる次男坊がいて、自分が死んだ時には財産をびた一文やりたくない。ところが民法には相続人に最低限認められた「遺留分」があり、1円も与えないということはできない。しかし聞くところによれば「相続人の廃除」という特例があり、それを使えばいっさい遺産分割に参加させないことが可能だというが、どういう制度なのだろうか。

 

 法定相続人のうち配偶者、子、父母は、たとえ遺書などで財産を分けてもらえなくても、民法で定められた「遺留分」によって、最低限の遺産を受け取る権利がある。

 

 財産を残す本人がどれだけ遺産を分け与えたくなくても、その取り分をゼロにすることはできないわけだ。しかし例外もあり、その一つが「相続廃除」だ。

 

 相続廃除は、財産を持つ人本人が、家庭裁判所に申し立てるか遺言に記載することで、特定の相続人を遺産分割に参加させないことができる。廃除された相続人は遺留分も失い、1円も手にすることはできない。まさに相続からの〝排除〞といえる制度だ。

 

 しかし民法で定められた遺留分まで奪うという強制的な処分だけに、相続廃除は簡単には認められない。一番多いのは、長年親から暴力などの「虐待」を受けた子どもが、親の相続廃除を申し立てるパターンだ。虐待でなくても日常的に侮辱的な言葉を投げかけたり、秘密を暴露して名誉を傷つけたりといった「侮辱」行為がある時にも、廃除が認められるケースがある。また、その他の「著しい非行」があった場合でも、家裁が相続人の廃除を認めることがある。

 

 では、具体的に「著しい非行」とはどのようなものか。過去の事例を見ると、親の家から金品の持ち出しを繰り返して親に暴力を振るい、サラ金業者から金を借りて親に借金対応をさせたケースで、廃除が認められたことがあるようだ。ここから推測すると、「何かと反発してくる」や「折り合いが悪い」程度の事情では、廃除は認められない可能性が高い。

 

 なお最近では、オウム真理教の麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚と妻を、四女の申請に基づき、彼女の相続人から廃除することを認めた例がある。複数の事件を起こしたことや、母親が四女の養育を教団信者に任せていたことなどが、「虐待」と「著しい非行」に当たると判断したという。(2019/07/10)