所得のうち、株主や出資者が受け取る剰余金、収益の分配による収入は「配当所得」となる。この配当所得は、上場株式への投資であれば住民税を合わせて20・315%、それ以外なら20・42%が源泉徴収され、自分の口座には徴収済みの「手取り」が振り込まれることになる。この場合、確定申告は原則的に不要だ。
この課税方式は源泉徴収のみで納税が完結してしまうため、その方法を選びがちだが、配当所得については確定申告をし直すこともできる。源泉徴収されるのは仕方ないとして、その後で申告をするかしないかを選べるわけだ。
どこに違いがあるかというと、申告をしなかった場合には、配当所得は他の所得から切り離された上で前述の約20%の税率がかけられる。一方、申告をすれば、配当所得と他の所得とを合算した上で、15%〜55%の累進税率が適用されるのだ。そして合算した場合にのみ、課税所得の総額や配当所得に応じて一定額を差し引ける「配当控除」を適用することができる。
配当控除や所得税の累進税率を加味した上で、あらためて実際の税負担を考えてみると、課税所得が695万円以下であれば、所得税の税率が20%なので、この時点で申告しなかった時の税率を下回る。さらに配当控除も使えて実効税率は17%ほどとなり、確定申告をしたほうが得をする。所得がさらに低ければ、お得度も増す。
逆に課税所得が695万円を超えると所得税の税率が23%となり、申告しなかった時の税率を超えてしまう。配当控除を考慮しても、わずかに損をすることになる。つまり所得税の税率だけを考えれば、その年の所得が695万円以下であれば、配当所得について確定申告をやり直したほうが節税になる。
ただし他の所得と合算してしまうと、前年から繰り越した損失の控除や、他の株取引で生まれた損失の通算などができなくなるというデメリットもある。全体の税負担や損益まで踏まえた総合的な判断が必要だろう。(2019/02/07)