子や孫への教育資金の贈与について1500万円までの一括贈与を非課税にする「教育資金贈与の特例」が、今年4月から見直されている。2019年度税制改正によるもので、①贈与を受ける側に年収1000万円の上限が設けられた、②23歳以上の子や孫について学費や限定された教育訓練費以外の費用は非課税の対象外となった、③贈与を受けた側が23歳以上で学校などに在学せず何ら教育訓練も受講していない場合には「3年持ち戻し」ルールの対象となった――という3つの見直しが行われた。
①については、すでに高年収を得ている子や孫については、贈与による支援の必要性はないということだろう。②については、これまではスポーツジムやピアノなど習い事も適用対象とされていたが、23歳以上の習い事を対象外とし、厚生労働省が認める職業訓練や資格取得の講座に限定した。③は、特例を使った生前の〝駆け込み相続税対策〞を防ぐ狙いだ。
相続税法では原則として、「相続発生前3年以内の生前贈与については、相続財産として扱う」という規定が設けられているが、教育資金贈与の特例はこれまで、その対象外となっていた。そのため、特例を使えば余命数カ月の段階であっても子や孫の数だけ財産を非課税で贈与でき、資産家の駆け込みの相続税対策に多く使われてきた。
しかし4月からは、23歳以上の子・孫への贈与については、通常の贈与同様、3年以内に相続が発生すれば相続財産に持ち戻されることになった。これまでのように相続発生の直前に30歳未満の孫全員に1500万円ずつを贈与して相続財産を圧縮するような相続税対策はできなくなったわけだ。
もちろん縮減されたとはいえ、通常の贈与に比べて1500万円というまとまった額を非課税で渡せる強みに変わりはない。また子や孫が23歳未満か、23歳以上であっても学校等に在学するか教育訓練給付金の対象となる訓練を受講していれば、持ち戻しはされない。これは変わらぬ大きな強みと言っていいだろう。(2019/05/22)