故人名義の銀行口座は、法定相続人でも自由にお金を引き出せない〝凍結状態〞となるため、葬儀代や当面の生活費の支払いには、基本的に相続人が元々持っていたお金を充てるしかない。
しかし今年7月からは、被相続人の預貯金を一定額まですぐに引き出せる制度がスタートするため、相続人がお金の捻出に頭を悩ませる状況は減りそうだ。
新制度は民法改正によるもの。現行法では、口座名義人の死亡を金融機関が把握した段階で口座が凍結され、遺産分割協議が成立するまでは基本的にお金を引き出すことができなくなる。
これは故人の預金を相続人が勝手に使い込むことを防ぐための対策だが、相続発生直後は平均195万円とされる葬儀費用(日本消費者協会のアンケート調査)など何かとお金が必要なため、相続人の手元資金ではカバーできないこともあった。
今後は遺産分割協議が終わる前でも、相続人1人当たり「預貯金額×3分の1×法定相続分」までは引き出せるようになる。上限は金融機関ごとに150万円で、複数の銀行に口座があればそれぞれから引き出し可能となる。注意しなければならないのは、口座から引き出した金額は、その相続人が受け取れる相続分から差し引かれてしまうことだ。相続人の一人が引き出して葬儀費用を立て替えるなら、領収書などの証拠を残し、後になって他の相続人から分担すべき金額を徴収するようにしたい。(2019/06/28)