商売で目の出ない息子が、「必ずあとで返すから」と言って、運転資金の無心をしてきた。親として助けてやらなければならないと思った父親は、「将来、事業が安定したら返せばいいから」と、貸してやることにした。返済期限や利子を決めることはなかった。
さて、この親子の貸し借りは税務署に贈与と認定されてしまう可能性が高い。親と子、祖父母と孫など親戚関係にある人同士の借金は、借入金の返済能力や返済状況などから見て「真に金銭の貸借契約」であるかどうかが判定される。ある時払いの催促なしや出世払いのように、通常の第三者間の貸借契約ではあり得ないような条件での借金は、実質的には贈与と認定されてしまうのだ。
万が一にも贈与認定されないためには、返済期間をきちんと設定し、貸借契約書を作成する必要がある。親子間の借金でなにを水臭いと言いたくなるが、贈与税を避けるためなので仕方ない。
さらに、たとえ貸借契約であると認められても、無利息であったり相場に比べて著しく低い利率であったりすると、利息分が贈与されたとして、これまた贈与税を課される可能性がある。息子が多額の税負担に苦しまないためにも、親子間であっても金の貸し借りだけはきちんとしておきたいところだ。
なお「出世払い」というと「出世しなければ返さなくてよい」という意味に取りそうだが、過去の判例ではおおむね、「出世できないことが明らかになった時点で返済義務が生じる」という見方が採用されている。(2019/02/08)