自治体によっては、要介護認定を受けている人を介護している家族に対して、支援手当を支給するところがある。また家族を介護するために会社を辞めた人は、厚生労働省から介護休業給付金を受け取れる。そのほかにも要介護者がいる低所得の世帯に慰労金を支給する制度など、介護負担に対する支援制度は全国にある。
超高齢社会への移行に伴う認知症患者の増加などによって介護離職が社会問題となるなか、こうした手当や給付金を受け取りたいと思う人はどんどん増えていくだろう。例を挙げると、一部の地方自治体では家族介護者支援手当として、要介護者が6カ月以上介護保険を利用していないことなどを要件に、受給者1人当たりの負担額をベースに月額数千円〜数万円の手当を継続的に支給する。
ここでいう「要介護」とは、身体上または精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事などの日常生活について常時介護を要する状態をいう。家族介護者支援手当は、このような障害のある人の家族に対して行われる自治体からの支援だ。
国税庁は、自治体からの介護者支援手当は「見舞金的性格が認められる」として、原則非課税の扱いを認めている。厚労省の介護休業給付金についても同様で、給付金を受け取ってもそれが所得となることはない。民間企業に目を向けてみると、家族を介護する従業員に時短勤務を認めたり、業務内容を考慮したりという企業は多いが、そのものずばり「介護手当」を支給する会社は多くない。大企業で言えば、自動車大手のホンダが2016年に「育児・介護手当」を導入したことで話題になったくらいだ。
しかし人口減少に伴い人手不足がますます深刻化していくなかで、家族を介護する人材をむざむざ離職させないためにも、何らかの対策を講じる必要性は中小企業でも高まっていくだろう。そのなかで、企業として従業員に介護手当を支給する可能性も十分にあり得る。
従業員への介護手当は税務上どう扱われるかというと、やはりこれも非課税になるだろう。入院したり自然災害に被災したりした従業員への見舞金は、原則として所得税が課されず、また会社側も福利厚生費として損金に算入できる。ただし、その金額が「社会通念上妥当な金額」を超えてしまうと否認されてしまうリスクがある点には気を付けたい。(2019/05/20)