資産運用の一環として不動産経営を行う社長さんは多いが、もし法人を立てずに個人事業として行っているなら、その規模が「事業的」かどうかで税金面のお得さは大きく異なってくる。
例えば不動産所得は家賃収入から必要経費を差し引いて計算するが、事業的規模と認められると青色申告特別控除を適用できる。さらに家族を従業員として給料を支払い、その全額を必要経費とすることもできるし、未回収分の家賃を貸倒損失として必要経費に計上し、その年の所得から差し引くことも可能だ。
加えて火災や地震によって不動産が損害を受けた際に、事業的規模であれば被害の全額をその年の必要経費に計上することが可能で、引ききれない分は翌年以後3年間にわたって繰り越すこともできる。翌年以降への繰り越しは、事業的規模でなければ認められないことだ。
では事業的規模と認められるためには何が必要なのだろうか。不動産投資では、①戸建て住宅を5棟以上貸している、②マンション・アパートを10室以上貸している――という2つの条件のうち、いずれかにあてはまれば「事業的規模」と判定するという基準がある。
「5棟・10室」どちらかの基準を満たすと、不動産経営を事業として行っていると見なされるわけだ。さらに「5棟10室」には、マンションやアパートの2室を戸建て住宅1棟に換算するというルールもあり、例えば戸建て3棟とアパート4室を経営しているなら、4室が戸建て2棟に換算され、合わせて5棟を貸していると見なされる。
同様の換算ルールは月極駐車場にもあり、駐車スペース5台分をマンション・アパートの1室に換算することになっている。つまり貸駐車場を50台分貸付けていれば10室分に換算されるので、事業的規模ということになる。
ただし、このルールはあくまで形式的基準であり、絶対基準ではない。例えば貸しているのは1棟でも、その1棟が著しく広ければ事業的規模とみなされることがあるし、逆に数字上は基準を満たしていても、事業的規模と認められないこともあるわけだ。最終的には実質基準で判定されることを覚えておきたい。(2019/05/24)