コツコツ投資で資産形成

「NISA」と「iDeCo」

それぞれの強みはどこ?


 2017年度税制改正大綱に、NISA(少額投資非課税制度)のバリエーションとなる「積立NISA」の新設が盛り込まれた。投資上限が低く非課税期間が長いことが特徴だが、通常型、ジュニアNISA、積立NISAと種類が増えたことで、違いが分かりにくくなってしまっている点は否めない。長期的な資産形成手段としては加入増が著しい個人型の確定拠出年金(iDeCo)もあり、それぞれをどう使い分けていくかが、今後の資産形成のポイントとなりそうだ。


 2014年にスタートしたNISAは、ある一定額までの株式や投資信託などの投資について、本来なら儲けの部分に対して課される20%の譲渡所得税が免除されるというものだ。現実的にはなかなかあり得ないだろうが、たとえ1億円の儲けが出たとしても完全非課税というのだから夢のある話だ。

 

 もっとも、メリットがある分、要件も厳しく設定されていて、現在のNISAは1年間の投資上限が120万円までで、非課税となる期間は5年と定められている。6年目以降も株を持ち続けて構わないが、6年目からの利益部分には20%の税金が課されることになる。

 

 17年度税制改正によって新たに創設される「積立NISA」は、この非課税期間を従来の5年から20年へと大幅に延長したものだ。例えば2017年に買った株式は、2036年まで儲けのすべてが非課税となる。20年間あれば株価は大きく変わる可能性があるため、NISAの持つ〝夢〞がさらに大きくなったと言えるかもしれない。途中での払い出し制限などもないため、自分の好きなタイミングで現金化することも可能だ。

20年非課税の「積立型」が新登場

 ただし非課税期間が長くなった分、1年間の投資上限は従来の120万円から40万円へと大きく減った。期間が長い分、トータルの投資上限は600万円から800万円へと増えたが、短期間でまとまった資産を形成するのは難しいかもしれない。従来のNISAとの併用はできず、政府は将来的には従来型を廃止して積立型に一本化する方針だとしている。

 

 制度を利用できる期間が20年と聞いて、ジュニアNISAを思い浮かべた人もいるかもしれない。16年から始まったジュニアNISAは未成年者を対象にした年間投資上限80万円の姉妹制度で、その対象は当然ながら0〜19歳となっている。

 

 確かにジュニアNISAの制度対象となる期間は20年だが、積立NISAとは全く違う「20年」であることに気を付けたい。ジュニアNISAでは制度利用できるのが0〜19歳の20年間というだけで、非課税期間は従来型と同じ5年間だ。つまり0歳時に投資した分については、6歳以降の利益には20%の税金が課される。しかもジュニアNISAの場合、一度投資した分を6年目以降自由に売買はできても、18歳になるまで口座から引き出すことができない。あくまで子や孫の長期的な資産形成のための手段なので、大人になる前の利益確定は許さないという趣旨だ。

 

 ジュニアNISAは非課税期間が5年どまりで、しかも厳しい払い出し制限がある。であれば非課税期間が20年と長く、払い出し制限もない積立NISAで子どもの資産形成をすればよいのではないかと考えてしまいそうだが、それはできない。積立型のNISAの口座は20歳以上でなければ開設できないからだ。

 

 ジュニアNISAは子名義の口座に年間80万円までの贈与をして投資するという考えのもと、最終的に払い出した資産は子本人の財産となるため、課税関係は発生しない。しかし積立NISAで同じことをすると、親から子に資産の移動があったものとみなされて、その全額に贈与税がかかってしまう。株式にかかる譲渡所得税は非課税でも、別の税金がかかってしまうわけだ。

損失リスクを忘れずに

 次に気になるのは、近年加入増の著しい個人型確定拠出年金(iDeCo)との比較だ。iDeCoも積立NISAも20歳以上を対象としており、株式や投信を使って資産形成をするという点では同じだ。しかしiDeCoは投資益が20年どころか将来にわたって完全に非課税となっている。掛金も所得から控除される上に、17年1月からは公務員や専業主婦も新たに制度の対象となり、もし利用できるのであれば、積立NISAに比べて有利なように思える。

 

 この点については、それぞれの強みが違うと言えるだろう。iDeCoはあくまで年金制度であるため、60歳になるまで払い出しができない。年齢による制限があるジュニアNISAと同じだ。一方、積立NISAはいつでも払い出しが可能だ。両者の特徴から言えば、老後の資産形成はiDeCo、現役世代の資産形成には積立NISAが向いていると言える。

 

 3種のNISA、iDeCoにはそれぞれ特徴があり、資産形成に活用する上では自分の目的に応じた使い方をすることが重要となりそうだ。ただしNISAもiDeCoも投資である以上、損失リスクは覚悟しなくてはならない。NISAでは4人に1人が損をしているというデータもあり、アベノミクスによる株高基調に陰りが見えるなか、この数字は今後さらに増える可能性もある。当たり前の話だが、投資は得もすれば損もするという事実をしっかり認識して、制度を利用していきたい。

(2017/01/28更新)