贈答や飲食で交際費の支出が一気に増える年末年始。交際費は税法上の条件を満たしさえすれば会社の損金に算入できるが、処理を誤ったり不備があったりすれば損金にできず、法人税を課されることになってしまう。交際費の支出額が大きくなるこの時期、贈答品と飲食に関する豆知識などとともに税務の処理を改めて確認しておきたい。
年末年始の贈答をしたことがある人にとっては常識だが、関東と関西ではお歳暮を贈る時期が違う。より正確にいえば、関東だけが12月1日から20日頃とされ、それ以外の地域ではより短く、13日から20日ごろに贈るのが正しいとされている。
時期が異なる理由ははっきりとはしないようだが、そもそもお歳暮は12月13日、旧暦で婚礼以外には何事もめでたいとされる「鬼宿日」に正月の準備を始めるならわしがあり、その日に先祖への供え物を持ち寄っていたのが由来とされる。
それが時代の流れとともに、お世話になった人への感謝の贈り物をする習慣へと変化した。さらに現代に至るまでに、クリスマスや正月といった他の商戦とかぶらないようにというビジネス上の都合、あるいは12月初旬がボーナスの支給時期であることなどにより、シーズンが前倒しされてきたという事情があるようだ。
近年ではお歳暮やお年賀が取引先への日頃の感謝の表れであるにしろ、商売上やむを得ない付き合いであるにしろ、多数の相手に贈るとなれば出費はばかにならない。しかしルールを間違えなければ、贈答品にかかった費用は全額経費として落とせる。改めて、その税務を確認しておきたい。
前提として、贈答品の費用は税法上の「交際費」に当たる。交際費は原則的に法人税の課税対象だ。これは遊興の性質が強い交際費を経営のための支出とは認められないという考えが根底にあるためだ。だが年末年始の贈答などは実質的に業務の一環でもあり、すべてが単なるプレゼントとは言えない。そのため、交際費には上限を定めた上での損金算入ルールが設けられている。
現在、資本金1億円以下の中小企業が損金に含むことができる交際費の上限は「交際費のうち飲食費の50%か、交際費800万円のどちらか多いほう」、個人事業主については「上限なし」となっている。
国税庁が発表したデータによれば、資本金1千万円以下の中小企業が1年間に使った交際費は1社当たり約85万円、資本金1千万円超5千万円以下でも211万円ほどと、800万円には遠く及ばない。実質的に、中小企業は交際費を青天井で損金にできると考えていいだろう。つまり贈答品代も全額が損金になるわけだ。
ただし注意したいのは、贈答品が「飲食費ルール」の適用外だという点だ。税法では1人当たりの飲食費が5千円以下であれば、そもそも交際費ではなく飲食費として全額損金にできるという「飲食費ルール」がある。しかし贈答品の場合は箱の中身がたとえ飲料・食料品であっても、このルールを適用することはできない。交際費として処理しても損金にはできるのだから、まぎらわしい処理をして税務署ににらまれるのは避けたい。
一方、この「飲食費ルール」を存分に活用したいのが、年末年始の忘年会・新年会の費用処理だ。一次会と二次会でそれぞれ5千円を落とすことも可能なため、活用できる場面は多いはずだ。ただし飲食費ルールを適用するためには、代金が一人当たり5千円以下であることに加え、必ず外部の人間を一人以上招いての飲食であることが求められる点にも注意したい。ルールを適用するために記録上だけ人数を水増しするような行いはもっての他で、加算税のなかでも罰則の厳しい重加算税の対象にもなり得るので慎むべきだ。
もし社外の人間を招かない社内での飲み会であれば、こちらは、よほど豪華な宴席でも催さないかぎりは、そもそも「福利厚生費」として全額損金にできる。福利厚生費で落とす時のコツは、従業員全員をきちんと呼ぶことだ。大きな会社であれば部署ごとでも問題ないが、最初から「お気に入りの社員だけ」「役員だけ」というような縛りを設けてしまうと、飲み会の費用は福利厚生費ではなく一部従業員への給与とみなされてしまう。もちろん、仕事の都合などで出席できないという従業員が出ることはやむを得ない。
前述したように、会社の規模によって異なるものの、資本金1千万円以下の中小企業の交際費は平均80万円〜90万円ほどだ。この平均値から著しく逸脱していると、税務署に目を付けられ、税務調査を受ける可能性が高くなる。
もちろん税法上正しい処理をしていれば、どれだけ交際費が高かろうが問題はないので、領収書や参加者の記録、業務との関係性などを説明できるようにしておくことを忘れてはいけない。交際費はルールを守りさえすれば問題なく損金として落とせるものだ。取引先との関係強化のためや、社内の結束力向上のために、交際費を有効に使っていきたい。
(2019/01/09更新)