ふるさと納税ワンストップ特例

6カ所以上の寄付は利用不可

忘れたままだと「通常の寄付」に


 任意の自治体に寄付をすると税優遇を受けられる「ふるさと納税」が右肩上がりに利用件数を伸ばしている。その理由の一つには、税優遇を受けるための確定申告が不要となる「ワンストップ特例」が昨年からスタートしたことがある。だが、同特例を利用するための要件として「寄付先が5カ所以内」という〝制限〞がかけられていることをご存じだろうか。それと知らずに申告を怠り、税優遇が受けられなかったというケースも増えている。ワンストップ特例を使うつもりなら、確申期には利用条件をもう一度確認する必要がある。


 ふるさと納税は、任意の自治体に寄付をすることで、住んでいる場所で納める所得税や住民税で控除を受けられるという制度だ。思い入れのある土地を応援できることに加えて、寄付に対して自治体から贈られる返礼品の豊富さが人気を集めている。2008年のスタート以来、利用者を増やしてきたが、特に15年度には金額ベースで前年度比4倍増という急激な伸びを見せた。

 

 突然利用者が増えた背景には、15年度税制改正によって2つの拡充が図られたことが要因としてある。その一つは、ふるさと納税によって税優遇を受けられる寄付金の上限額が2倍に増えたことで、これによって寄付先や返礼品の自由度がはるかに増した。なかには寄付金100万円以上の人に対する返礼品なども登場し、高額納税者たちの興味を引くこととなった。

 

 もう一つが、給与所得者など、もともと確定申告が不要なサラリーマンなどを対象として申告を不要にする「ワンストップ特例」の創設だ。

 

 ワンストップ特例では、寄付先の自治体に特例利用の申請をすることで、自治体が税優遇のための手続きを代行してくれる。寄付をすると送られてくる「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に住所や氏名、マイナンバーなどの必要事項を記入し、マイナンバーの本人確認書類を同封して送れば、自分で確定申告をする必要がなくなる。

 

 従来ふるさと納税による税優遇は確定申告が必要だったが、申告をしたことがないサラリーマン層には心理的なハードルとなっていた。これを取り払うことで制度利用の裾野が一気に広がり、利用者の激増につながったわけだ。

 

タイムリミットは3月15日

 ふるさと納税ではこれまで、所得税と住民税に分けて控除がなされ、所得税については還付、住民税については次年徴収分から減額という形で優遇されてきた。確定申告をする分については現在もそのままだが、ワンストップ特例の利用者に限っては、すべてが住民税からの優遇という形になることが特徴だ。還付ならば手元に戻ってくるため優遇を実感しやすいだろうが、いちいち翌年度の住民税が優遇されているかを確認するという人は少なく、「おそらくちゃんと引かれている」と思うに任せているだろう。

 

 だが昨年のワンストップ特例のスタート以降、ふるさと納税をして特例を利用したつもりが実際にはできていなくて、税優遇を受けられなかったという事例が報告されている。その理由は、特例利用のための要件を見落としたことにあるようだ。

 

 ワンストップ特例を利用するためにはいくつかの条件を満たす必要がある。給与所得者で年収2千万円以下であること、つまり確定申告を行う必要がない人であることも、その一つだ。それに加えて見落とされがちなものに、「1年間の寄付先が5団体以下であること」がある。

 

 寄付上限が許すかぎり、さまざまな自治体に寄付をして多くの特産品を楽しみたいという人は多い。あえて少額で複数の自治体に寄付することもあるだろう。だが寄付先が6団体以上になった人は、たとえ確定申告が不要の人でもワンストップ特例は使えなくなる。しかも特例が使えなくなるのは5団体を超えた6団体目からではなく、寄付したすべての自治体だ。つまり6自治体に寄付をしたなら、その6カ所への寄付すべてについて改めて確定申告をしないと、税優遇は受けられない。

 

「超過分だけ申告」は間違い

 すでに特例申請をして受理されている人でも確定申告は必要だ。ワンストップ特例の手続きと確定申告が二重になされた場合には、必ず確定申告が優先されることになっている。確定申告を行わないと、どれだけ多額であっても、そのすべてが純然たる〝寄付〞となってしまうので重々注意が必要だ。

 

 確定申告でふるさと納税の税優遇を受けるためには、寄付先の自治体から送られてくる「寄附金受領証明書」を添付する必要がある。もし紛失してしまったなら自治体に連絡して再発行してもらうことが可能だが、当然郵送などによるタイムロスは生じるため、所得税の申告期限である3月15日に必ず間に合うようにしたい。

 

 なお、同じ団体への複数回の寄付は、何度行っても1回とカウントされる。例えば3つの自治体に合計6回の寄付をしたというケースなら、ワンストップ特例を利用することができる。ただし同じ自治体であっても特例申請は寄付1回ごとにしなければならない。申請を忘れたのであれば、すでに特例申請の期限は過ぎているため、やはりすべての寄付について確定申告が必要だ。

 

 実際にお金が還付という形で手元に戻ってくる所得税に比べて、住民税は次年徴収分からの減税というという形で税優遇が行われるため、その効果を実感しづらく、特例が適用されていなくても気付きにくい。ワンストップ特例を使うつもりならば、確定申告期の今こそ、要件を満たしているかをもう一度確認して適用漏れのないようにしておきたい。

(2017/03/02更新)