1954年の判決以降、預貯金は「遺産分割の対象にならないもの」とされてきた。その判例を昨年、最高裁判所が62年ぶりに覆し、預貯金は遺産分割の対象になると変更した。
実際には、これまでも相続人同士で合意すれば、預貯金を遺産分割の対象に含めることができた。また、家庭裁判所での遺産分割調停では、預貯金を含めた遺産全体をどのように分割するか話し合うように促されることが多かった。
しかし、相続人の間で対立が激しくなると、預貯金を遺産分割の対象にする合意ができなくなってしまっていた。今回の最高裁の判例は、まさにそうした訴訟から引き出されたものだ。特定の相続人だけが被相続人から生前贈与で多額の現金を受け取っていて、預貯金を遺産分割しなければ相続人間で著しい不公平が生じるというケースを考慮した変更だといえる。
最高裁のこの決定は、相続問題に巻き込まれたくない金融機関にとっても大歓迎のはず。従来から、亡くなった人の預貯金については、遺産分割協議書や相続人全員の合意書を提出しなければ、払い戻しに応じないことが多かったからだ。(2017/08/08)