贈与の税負担を減らす

自社株贈与の減税特例


 贈与に対する課税方式には2種類があり、納税者が自由に選ぶことができる。「暦年課税」方式は毎年110万円の非課税枠を控除した残額に応じ税率がかかるもの。「相続時精算課税」方式は、2500万円までの贈与が非課税になるが超過分に一律20%の贈与税が課され、その後、相続が発生した時点で贈与額を相続税の課税対象額に合算し、すでに納めた贈与税額を差し引いて相続税額を計算するもの。

 

 このうち相続時精算課税は、制度を利用することを贈与時に申告しなければならない。トータルの税負担が低いからといって、相続が発生してからの後出し利用はできないわけだ。

 

 だが、相続時精算課税を後出しで利用できる特例的なケースもある。それが事業承継税制の利用時だ。事業承継税制は、中小企業経営者が二代目に自社株を引き継いだ時に、従業員を継続して雇用するなどの要件を満たせば贈与税負担や相続税負担を猶予できるというもの。贈与ならば全額が猶予され、その後要件を満たし続ける限り猶予は続くので、実質的には税負担がゼロになるといってもいい。

 

 2017年度税制改正では、猶予取消時にかかる贈与税について、相続時精算課税の利用が認められるようになった。従来は、要件を満たせなくなった時の贈与税額の計算方式として「暦年贈与」しか認められなかったため、一括贈与なら110万円を除くすべてに贈与税がかかってしまっていた。しかし改正によって、たとえ要件を満たせずに猶予が取り消されても、今後は2500万円までは非課税となるわけだ。猶予取消時のリスクが大幅に減ったと言えるだろう。

 

 またこの改正では、小規模事業者の従業者減リスクなどを考慮して、従業員4人以下の事業者については、1人減っても猶予を継続できるよう条件が緩和されている。(2017/08/24)