近い将来、相続をめぐる大掛かりな民法改正があるかもしれない。法務省では現在、相続法制の見直しに向けた検討が進められている。今年7月に発表された中間試案によれば、結婚生活20年を超える夫婦間で、贈与や遺言によって住居が配偶者に贈られた場合、その自宅については遺産分割の対象に含めないとする内容が盛り込まれている。
現行法では、たとえ長く夫婦で住んでいた自宅であっても、居住用の建物、土地ともに法定相続人の間で協議して分配する相続財産とされる。他の相続人が満足するだけの取り分がほかにあればいいが、相続財産の大半を自宅としての不動産が占めていると、それを売却するなどして現金を分けなくてはならない。現役をリタイアして収入の少ない配偶者が自宅を手放さざるを得ない可能性もあるわけだ。
高齢社会化が進むなかでこうしたケースは今後増えていくと予想され、残された配偶者の生活を守る必要があるとして改正案に盛り込まれた。もちろん自宅を分割なしに引き継いだからといって、もともと配偶者が持つ法定相続分が減るということはない。つまり改正が実現すれば、配偶者の遺産分割での取り分は大きく増えることになる。(2017/08/23)