祖父に隠し子!

遺産分割で孫が借金するはめに


 創業60年の飲食店を経営する35歳のAさんは、先日大往生した85歳の祖父のために窮地に陥っている。2年前、店主だった57歳の父が他界したとき、300万円足らずの父の財産はすべて母親が相続した。父名義の財産が少なかったのは、自宅や事業用の土地・建物のすべてが創業者の祖父のものだったからだ。

 

 父から店を引き継いだAさんは、順調に売上を伸ばす。そろそろ法人化も視野に入れ始めた矢先、祖父が亡くなった。相続手続きのために取得した戸籍謄本を調べると、祖父がAさんの祖母と出会う前に別の女性と結婚していて、子どもを1人もうけていたことが判明した。

 

 驚いたAさんが母に事情を聞くと、その事実を知らなかったと言う。そこで先方に問い合わせると、祖父の妻であった女性は30年前に亡くなっていたが、その娘は60歳で健在だった。つまり、法定相続人が1人増えたことになる。

 

 Aさんは、「おば」にあたるその女性を訪ねた。そして、祖父の財産の不動産はAさん一家が引き継ぎ、預貯金の半分を譲ると提案した。しかし彼女は、不動産も含めた財産の2分の1を要求。「2歳の時に両親は離婚。以来、母は女手一つで生計を立て、私も苦労しました。何の支援もしなかった父は、今、その報いをすべき」と、一歩も譲らない。

 

 祖父の相続財産の総額は8000万円で、そのうち現金は2000万円のみ。「おば」の望む4000万円相当の財産を渡すとなると、現金が2000万円足りない。Aさんは仕方なく金融機関から2000万円を借り入れて彼女に渡した。

 

 隠し子と相続が絡むと、残された家族に大きな負担となる。心当たりのある人は、生前になんとかしておきたいものだ。(2017/10/23)