ひとたび相続が起きれば、その手続きは面倒を極める。相続人は不動産登記の変更や相続税の申告、銀行口座の解約などのために、相続人全員の戸籍書類を集めて、相続対象となる不動産を管轄する自治体の法務局や、預金のある金融機関ごとに必要書類をそろえて提出しなければならない。
そうした手続きが面倒で登記変更をしない相続人も多く、結果的に数十年も経って「所有者不明」となる山林などが全国的に発生する原因ともなっているようだ。
こうした現状を受けて、今年5月29日に「法定相続情報証明制度」がスタートした。同制度では、全国に417カ所ある登記所のいずれかに、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍関係書類と、相続人全員分の本籍、住所、生年月日、続柄、法定相続分などの情報をそろえて一度提出すれば、偽造防止措置が施された法定相続情報の一覧図の写しが発行されるというもの。
以降の手続きは法務省の発行する写しを利用すれば、各種の手続きのたびに全必要書類を提出しなくて済むという。当面、この証明書が使えるのは不動産登記の手続きのみに限られているが、すでに戸籍関係書類に代えての受け入れを準備している金融機関も複数あり、対応されれば銀行口座の解約の際にも利用できるようになる。法務省は将来的には、相続税の申告にも利用できるようにすることを目指しているという。(2017/08/26)