社員の退職金の原資にする目的で生命保険に加入していても、資金繰りの問題から解約して運転資金に回すケースは少なくない。その際、全契約を一度に解約すれば税務上あまり問題にならないが、保険金を減額して現金を捻出する場合はミスが起きやすいので注意が必要だ。
保険金額の減額は、「保険契約の一部解約」と考えられているため、減額した部分にかかる保険料積立金は返戻金として戻ってくる。このとき、保険料積立金の取り崩し分と返戻金との差額は、雑損失として計上することになる。
保険料積立金の取り崩し額は「保険料積立金×減額部分保険金額÷減額前保険金額」で計算する。たとえば、社長を被保険者、死亡保険金・満期保険金の受取人を会社とする養老保険で、当初の保険金4千万円を3千万円に減額したとする。減額時の保険料積立金を1千万円、減額にともなう返戻金を200万円とした場合、取り崩し額は250万円(1千万円×1千万円÷4千万円)となる。したがって、この会社における保険金減額にともなう処理は、保険料積立金250万円を取り崩すと同時に、減額による返戻金200万円との差額50万円を雑損失として計上することになる。
資金繰りの関係で、「少しでも現金がほしい」という会社の間で、生命保険に着目したこうした手法への関心が高まっているが、経理処理がいい加減になっているケースも少なくないことから、当局もチェック態勢を強めているところだ。(2017/09/15)