前期に黒字を計上して多額の税金を納めたが、当期は一転して大赤字となった中小企業は、前期に納税した法人税を取り戻せるかもしれない。
これは、「欠損金の繰り戻し還付」という制度で、平成4年から長い間停止されていた制度だったが、平成21年の税制改正で中小企業者に限り復活したものだ。①前年度と当年度のいずれも青色申告書を提出していること、②確定申告書と同時に還付請求書を提出すること、③確定申告書を申告期限内に提出すること――のいずれの要件も満たしている中小企業であることが適用の条件となる。
還付は、「前期法人税額×今期欠損金額÷前期所得金額」で計算される。前期法人税額が200万円、今期欠損金額が900万円、前期所得金額が1200万円だった場合、「200万円×900万円÷1200万円」で還付金額は150万円となる。
だが、今期欠損金額が前期所得金額を超えると、税務処理は違ってくる。仮に、前期法人税額200万円、今期欠損金額1500万円、前期所得金額が1200万円だとする。この場合、前期所得金額が限度額となるため、今期の欠損金額は1200万円。還付金額は200万円(200万円×1200万円÷1200万円)となる。
上限を超えた部分の欠損金(1500万円-1200万円=300万円)は「欠損金繰り越し控除制度」を利用して翌年以降の所得金額から控除できる。「欠損金の繰り戻し還付」と似ていて紛らわしいが、「欠損金繰り越し控除制度」とは、過去の事業年度で発生した欠損金を、翌期以降9年間を上限に繰り越して、各事業年度の所得から控除する制度のことだ。「還付」と「控除」で意味が大きく違ってくるので注意したい。(2017/11/08)