業務用固定資産の除去損

完全に不要なら現況有姿でも


 「最新の機械を購入した」「仕様が変わって使えなくなった」といった理由で業務用の固定資産が不要になるのは珍しいことでない。しかし、企業によってはこれらを処分せずにオフィスや工場などに放置しているケースがある。業務スペースを縮小し、固定資産税を負担してでも不用資産を抱え込んでいるのは、廃棄に莫大な費用がかかるからだ。

 

 環境問題を背景に産業廃棄物の「適正処理」が求められるようになり、処分にかかる費用は格段に上がっている。廃棄物処理法では、産業廃棄物の適正な処理方法を細かく定めており、排出業者はこれに従い責任を持って処理する義務がある。

 

 収集運搬から中間処理、最終処分に至るまでの工程は極めて細かく決められている。専門業者に委託すると、各工程で費用が発生し、さらに、産業廃棄物管理票を発行するにも費用がかかる。工場内にあるすべての不要な固定資産を処分するとなると莫大な費用を要することもある。こうした費用負担を避けるために業務用資産の処分を見合わせている会社の間で、「有姿除却」を適用するケースがある。

 

 これは、使わなくなった固定資産について廃棄、解体などを行っていない場合でも、対象資産の帳簿価額から現況有姿のまま、その処分見込価額を控除した金額を「除却損」として計上できるもの。不要資産を抱え込んでいる会社にとってはなんともありがたい制度だ。

 

 だが、税務署が有姿除却を認める際のチェックは厳重で、「もう使用しないつもりだったが、大量受注があったときについ稼動してしまった」「現在は生産していない商品の製造機械を有姿除却したが、まれにその商品の修理依頼がくると使っている」など、完全に不要でないと否認されるケースもあり得る。実際には廃棄していないモノを帳簿上「廃棄した」ことにする以上、それなりの〝体裁〞を整える努力は必要になるだろう。(2017/09/10)