愛人に生命保険金

相続税増え家族に迷惑


 自身の死後、愛人に財産を遺したいと考え、愛人を受取人として生命保険をかける人がいるが、じつはこの方法はあまりおすすめできない。家族が支払う相続税が増えてしまうからだ。

 

 被相続人が夫で、相続人は妻と長女、相続財産は1億5000万円だとする。基礎控除額は4200万円(3000万円+600万円×2人)なので、課税遺産総額は1億800万円(1億5000万円-4200万円)。2人の相続税総額は1840万円で、各自920万円となる。

 

 だが、愛人が生命保険金5000万円を受け取ったとすると、その生命保険金は「みなし相続財産」とされるため、相続財産は総計2億円となる。だが、愛人は相続人ではないので基礎控除額は変わらず4200万円。すると課税遺産総額は、1億5800万円(2億円-4200万円)となる。相続税の合計は3340万円で、1500万円も増えることになる。そして各自の相続税は1670万円に。

 

 いずれにしても、妻は配偶者控除の特例で相続税を支払う必要はない。しかし子は、920万円で済んだところを1670万円も支払うはめになる。750万円の負担増だ。もし、愛人が生命保険を受け取ったことが当初分からず、相続税申告後に発覚すると、過少申告加算税と延滞税が課せられる。そうなってしまったら、愛人隠しの怒りも加わって、誰もお墓参りはしてくれなくなるだろう。(2017/11/14)