温泉地で湯船に浸かると、入湯税150円を納めることになる。入浴客に課す地方税であり、使い道が決まっている目的税だ。温泉地の景気低迷から一部の自治体では特定の温泉施設の入湯税が不正に減免されていた事例もある。また、主要な宿泊業界団体は、入湯税の廃止を求めている。
一方、入湯税のあり方について、7つの有名温泉地が会員となる「温泉まちづくり研究会」は、積極的な提言を行っている。そもそも入湯税は、環境衛生施設・鉱泉源の保護管理施設・観光施設などの整備と、観光振興(観光施設の整備など含む)に要する費用に充てられることを目的とする。
主眼は、施設というハコモノの整備にある。研究会は、温泉地の観光まちづくりに入湯税を活用し、「観光の振興」を図るべきだとする。温泉街としてのブランド力を高め、集客力そのものを上げる。それによって雇用創出や税収増といった幅広い経済波及効果があるというわけだ。
具体的には、入湯税をかさ上げしつつ「観光まちづくり」使途への配分を高め、温泉地全体(観光業界、まちづくり組織)でその実現に取り組むことを提言している。この税金に対する研究会の提言は貴重である。業界や街全体が、目的税の使途を自らシビアに考え抜き、まちづくりというソフトに使おうというからだ。そもそも、納税者である国民自身が、税金の有意義な使い方について、もっと口をはさんでいくべきだ。(2017/09/22)