代理母出産の子

相続人にするには養子縁組が必要


 不妊に悩む夫婦が、代理母に出産を依頼する「代理母出産」。妻の卵子と夫の精子でつくられた受精卵で妊娠するので、生まれてきた子は夫婦のDNA(遺伝子)を持つ。

 

 しかしその子は、日本では法律的に夫婦の実子とは認められない。現行民法の解釈では、「出生した子を懐胎し出産した女性が母となり、卵子を提供した女性との間に母子関係の成立を認めることはできない」とあるからだ。

 

 代理母出産による子を相続人にしたければ、特別養子または普通養子にする必要がある。特別養子縁組は、養親と養子の親子関係を重視するため、養子は戸籍上養親の子となり、実親との親子関係がなくなる。そして、普通養子縁組は、養子が実の親との親子関係を存続したまま、養親との親子関係をつくる。

 

 法定相続人として認められる養子は2人。しかし、どちらの縁組を行うにしても、卵子を提供した女性の法的立場は「母」ではなく、あいまいなままだ。将来、被相続人の死後に、保存された精子・卵子から、相続人となる実子が生まれるなどの事態も起こりうる。そうなれば、相続に関する税務も変わらざるを得ない。先進医療に対応した法的な整備が必要なのではないか。(2017/07/14)