所有する不動産の種類や数が増えて事業規模が大きくなると、税制面で特典を受けることができる。家賃収入や礼金、更新料などの、不動産オーナーが得た賃貸収入は、所得税法では「不動産所得」として課税されるが、その規模が「事業的規模」か「事業的規模以外」かで税額は大きく違ってくる。事業的規模であれば経費が損金算入されるためだ。
だが現実には、「事業的規模」の定義が明確にされておらず、「事業と称するに至る程度の規模」で行われているかどうかによって判断されている。大まかな基準としては、貸与できる室数が、アパートやマンションの場合は10室以上、一戸建てでは5棟以上あることとされている。
賃貸用駐車場であれば、50台以上あるかどうかが目安となる。駐車場は5台で1部屋として換算されることから、50台が10室に相当するという計算だ。
事業的規模と判断されれば、賃貸アパートの取り壊し費用や火災での損失は、その全額が損金として計上可能となる。また不動産所得の損失は、他の所得との損益通算や純損失の繰越が可能だ。
事業的規模に達していなければ、必要経費に算入できる金額が「その年の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額」にまで制限されるのだから、その差は大きい。また、賃貸料などが回収不能となったことによる「貸倒損失」は、事業的規模であれば回収不能となった年分の必要経費に算入できるが、そうでなければ収入に計上した年までさかのぼり、その回収不能に対応する収入がなかったものとして所得計算をやり直さなければならない。
そのほか、青色申告特別控除によって控除できる金額が、事業的規模に達していれば最大で65万円となるが、そうでなければ最大で10万円の控除となる。(2017/07/16)